現代佛師による図像抄 Wii LOVE BUDDHIST IMAGE

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 ク ラ ス : 薬師如来十二神将
 真   言 : オン サンチラ ソワカ
 種   子 : trâḥ
 三昧耶形: 三鈷杵
 御 利 益 :薬師如来を信奉する衆生を障碍より見守る程度のご利益

 仏界は東方に在する薬師瑠璃光浄土の南方に住す。
 薬師三尊を信奉し、薬師経を唱うる衆生を守護する薬師十二神将のうちの一神。

 善化の際に虚空蔵菩薩と契約を結び、菩薩にとっては人間の召喚修法なしで顕現するための依り代となり、また珊底羅大将にとっては菩薩より恒久的な護法力供給を受ける相互依存の関係にある。

 珊底羅衆の肌の色は種類が多く、族衆ごとで14種に分けられる。すなわち、栗、栃栗、鹿、黒鹿、青鹿、青、芦、粕、駁(ぶち)、月、河原、佐目、薄墨、白となり、栗、鹿の体色を持つものが最も多い。髪の色はさらに個体ごとの特徴が現れ、ここでは栗の肌に尾花の髪※1 の珊底羅大将が描かれている。
 右臂にて三鈷杵を上揚す。

 優れた広域把握視野を持つ。視野角は頞儞羅衆を上回る350°もあり、また左右の眼で異なる範囲を見ることができる(浄単眼)。しかし、頞儞羅衆と同様、空間把握能力が低いため、長距離兵装の扱いが苦手。反面、優れた広域把握能力を生かした三鈷杵でのCQC(近接格闘)を得意とする。また、強靭な脚力から生まれる突進力を生かした突撃を得意とする。この際には持物を槍や戟に持ち替える場合が多い。
 嗅覚にも優れ、御仏や衆生の区別も、においで判断する。しかし、毒や血のにおいが苦手であり、勇猛であるのに反して戦場に行くときはいつも渋る。実行するまでが長いタイプ。
 戦場では立ったまま寝ることが知られる。ゆえに、珊底羅衆が歩哨任務に就くときは、他十二神衆は気が気でない。ただし、珊底羅衆の睡眠時間は他神衆よりも短いといわれている。寝ているうちに片足になるので、片足で立っている珊底羅衆を見かけたらまず寝ていると思ってよい。
 聴覚にも優れており、情報通でもある。ただし、伝聞情報であるためか、その価値は玉石混交といわれている。

 内在能力として、認識したことを半永久的に記憶する超長期記憶能力を有する。
 プライドが高く、気性も激しいため、衆生には慈愛深く、仏敵には容赦のない、信賞必罰を信条とする。
 特に帰敬する衆生への慈悲心は深いことが知られ、帰敬した者の顔を生涯忘れないといわれる。それを物語る、次のような仏教説話がある。湊川の合戦において、新田義貞は敗戦濃厚となり、騎馬が無数の矢を受け倒れてもなお、太刀を振るって奮戦していた。あわや討死と思われたとき、珊底羅大将が顕現し「今より助く」と申される。すると、随身していた小山田高家がその場に駆けつけ、義貞を自分の馬に乗せると戦場から離脱させた。義貞は戦死を免れたのだが、このとき高家は別の場所ですでに討死しており、珊底羅大将が高家の姿を借りて現れたのだといわれている。新田家の守護尊は薬師如来であり、義貞は普段より信心深く薬師如来を本尊とする梅照院に参っていたゆえ、薬師如来が珊底羅大将を遣わされたと説話では結ばれている。また、小山田高家の側室となった浄瑠璃姫は、岡崎家伝来の薬師如来像を持って嫁している。
 別の説話では、新田義貞の軍によって農耕馬を軍馬として徴用された百姓が、自身も足軽として参戦したが、足利尊氏の軍に撃破され、命からがら敗走していたときに珊底羅大将が顕現し、いずこよりか徴用されたはずのかつての愛馬が現れ、この百姓を乗せて無事逃げおおせたという話が残っている。この百姓は普段より薬師三尊と十二神将の像を祀った村の祠に参っていたという。
 また、1889年に日本寺を訪れた夏目漱石は『木屑録(ぼくせつろく)』 を完成させ、名刹である日本寺が衰微することを悲しんでいるが、その中に「馬の神を見る」という漱石らしからぬ奇妙な一文を残している。その後、イギリスに留学した漱石は随筆『倫敦塔』を執筆しているが、「丈の高い黒毛の馬が一つ中庭の隅にあらわれ」、漱石の足音を聞いて狂喜した様子を見せ、首を摺り寄せて愛咬をしてきた(馬が最大の愛情を示す態度)という記述が見られる。漱石はこれを馬の神との再会と記している。この馬の神とは珊底羅大将をいうとされる。※2

 喜怒哀楽に富み、「フレーメン」という、この族衆特有の笑い方がある。※3
 大食漢で甘党。ニンジンよりもリンゴが好き。御供物には角砂糖を、お供えするとよい。
 珊底羅衆の平均寿命は2000年から3000年であるが、4000年を生きるものもいる。
 頞儞羅衆同様、族衆間の結束力が固く、七千騎からなる魚鱗の陣の中央突破力は全眷属中、最強とされる。また、地上における長距離行軍にも珊底羅衆が最も優れているとされる。

 歴代の珊底羅大将の中では初代珊底羅大将である「黄金の」アハルテケ、超スピードを誇った「純潔の」女聖サラブレッドが知られる。
 また、珊底羅十神王として、「螺髪の」アンダルシアン、「軍王(Soldatenkönig)」トラケナー、「賢聖」リピッツァナー、「変幻の」セルフランセ、「有翼の」ハンター、「尖角王」ノルマン、「甲冑王」ペルシュロン、「巨体の雅王」ブルトン、「静謐の」女仙シャイヤー、「閃公」クライズデールが挙げられる。

 ※1 尾花栗肌:黄褐色の肌色に、白および白に近い髪を持つものをいう。
 ※2 日本寺の御本尊が薬師如来であることから、眷族である珊底羅大将が想定されるのであろう。
 ※3 上唇と鼻先にしわを寄せ、歯をみせる笑顔。人間でいうところの「イーだ」に近い。

(尊像出典:『薬師瑠璃光如来本願功徳経』)