現代佛師による図像抄 Wii LOVE BUDDHIST IMAGE

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 梵   名 : アーカーシャ・ガルバ [Ākāśagarbha]
 ク ラ ス : 胎蔵界虚空蔵院教主、地空二量尊
 真   言 : オン バザラ アラタン ノウ
 種   子 : trāḥ
 三昧耶形: 智剣(自念智)、金剛蓮華上如意宝珠
 印   契 : 与願印
 御 利 益 :極限まで智慧を発揮できる程度のご利益、自ら願いを叶えるための知恵を閃く程度のご利益

 文殊菩薩と同じく、総体としての大日如来の表わす「智慧」の究極的具現体であり、また金剛界四智(大円鏡智、平等性智、妙観察智、成所作智)と胎蔵四菩提(発心、修行、菩提、涅槃)を内応機関とする。文殊菩薩と異なるのは、虚空蔵菩薩が大日如来の「智」すなわち「般若」の完全クローン体という点であり、文殊菩薩の司る「智慧」(遍智もしくは識)が自ら得た知識や経験から出ずる後天的作用であるのに対し、虚空蔵菩薩の「智慧」は、これら後天的なものに加えて、先天的に有する才能などをも司る点である。
 ゆえに古来より職種や階層にかかわりなく、成功成就を求める者の信奉を集めた。
 しかしながら、あくまで大日如来が持つ一功徳のクローン体ということから、信仰の表舞台に立つことは少ない。*1

 具体的な修法として「虚空蔵求聞持法」があり、所定の法起動作法とともに、虚空蔵菩薩の召喚真言である「ノウボウ アキャシャギャラバヤ オン アーリ キャマリ ボリ ソワカ」を100日もしくは50日間かけて100万回唱えるというものである。これを修した者は、物事の一切を一度見聞すればすべて理解し、記憶する「完全記憶能力」を持つことができるとされる。50日行を完遂させた者は、完全記憶を自由に呼出、削除、復元、完全削除などすることができるインデックス機能をも得ることができるようになる。
 通常、100日行では一日のうちに唱える真言は1万回にも達するが、行が進むにつれて真言を一瞬のうちに唱えることが可能となっている。・・・・・・はずである。
 この行法は、奈良時代に善無畏に師事した大安寺の道慈によって唐よりもたらされ、善議(ZENGI)・勤操(GONZO)に伝授、勤操に師事した空海、またその弟子の道昌へと伝わったとされる。空海の著書『三教指帰』には、行法によりインデックス機能を有した完全記憶能力を得たことが記されている。
 また『今昔物語集』には、偏差値35だった比叡山の学僧が美しい女人に応現した虚空蔵菩薩の勧めにより学問に励み、後に山内一の学僧になった説話が拾遺されている。ちなみに、その励ましとは、立派な学僧になったら、あなたの女になってあげるという、それってどうなの?的なものである。
 「虚空蔵」とは、「虚空」すなわち宇宙に譬えられる広大無辺な収蔵スペースを持つ宝蔵を意味し、実際に虚空蔵菩薩は56億7千万冊の経巻を記憶している。また、梵名のアーカーシャ・ガルバは、「献身的な小牛は御仏の智慧を守る」を意味する。
 肌黄桃色にして髪柳楊紫檀、容貌微笑(みしょう)顔、菩薩には珍しい紅眼を持つ。肌や髪からかすかな黄熟香の匂いがただよっているといわれる。右臂与願手にて智剣を、左臂にて金剛蓮華上如意宝珠を持つ。化仏(五智如来)を置いた宝冠を戴き、真珠の条帛を纏い、黄金の瓔珞にて荘厳する。
 光背は菩薩の中で唯一、満月環を背する。*2

 本来は地蔵菩薩とともに地空二量尊を形成するが、地蔵菩薩のソロ活動メイン化によりコンビは解散、現在では二量尊として祀られることはほぼない。

 ※1 五大虚空蔵菩薩:大日如来の五智を五色身の虚空蔵菩薩に分化したものをいう。衆生の息災・増益などの現世利益を祈願し、本尊となることを果たしている。五大虚空蔵菩薩とはすなわち、法界(ほっかい)虚空蔵、金剛虚空蔵、宝光虚空蔵、蓮華虚空蔵、業用(ごうゆう)虚空蔵である。

 ※2 月光菩薩の光背は半月環、上弦下弦月環など、環光背の形を取りつつも、正確には満月ではない。

(尊像出典:『虚空蔵菩薩経』)